安楽死とは?くらんけさんの選択と世界の事例、賛否について
安楽死は、治療の見込みがない病気や耐え難い苦痛に苦しむ患者が、自らの意思で医師の助けを借りて死を選ぶ行為である。この問題は、倫理的にも社会的にも議論の的となっており、多くの国で異なる対応がなされている。今回は、30歳の難病患者くらんけさんの事例を通して、安楽死の選択とその背景について考えるとともに、世界での現状と賛否についても解説する。
くらんけさんの安楽死を巡る葛藤
くらんけさん(仮名)は、治る見込みがない難病「CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)」と長年闘い続けてきた日本人女性である。彼女は、日々強い痛みや身体の不自由さに苦しみ、家族への負担を感じながら生活を送っていた。ある時、彼女は家族に「安楽死を選びたい」と伝え、最終的にスイスへ渡る決断をする。しかし、その選択には大きな葛藤があった。
くらんけさんは、自分の死を選ぶことがエゴなのか、それとも生きてほしいと願う両親の気持ちがエゴなのか、その狭間で長く苦悩していたという。両親は安楽死に反対し続けたが、最終的に彼女の決断を尊重し、スイスまでの同行を決意した。
スイスの安楽死団体で手続きが進み、致死薬を前にした彼女は、ついに安楽死を選ぼうとするが、最後の瞬間、家族のことを思い出し、命を終えることを思いとどまる。結果として彼女は安楽死を行わず、家族と共に再び日本へ戻ることを選択した。しかし、今も「死にたい」という気持ちは変わらないままであるという。
安楽死の種類
安楽死は大きく分けて以下の2つに分類される。
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積極的安楽死:医師が致死薬を処方し、患者自身がそれを服用して死に至る行為である。スイス、オランダ、ベルギーなどで合法化されており、厳格な条件のもと実施される
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消極的安楽死(尊厳死):延命治療を中止し、自然な形で死を迎える方法。これも多くの国で認められており、特に終末期医療での選択肢として広く受け入れられている
世界での安楽死の現状
オランダ、ベルギー、カナダ、スイスなどの国では、積極的安楽死が法的に認められている。スイスは外国人でも安楽死が可能な国であり、多くの人がスイスに渡り最期を迎える事例がある。一方で、日本では安楽死は法的に認められておらず、行った場合は殺人罪に問われる可能性がある。
日本における安楽死の現状
日本では積極的安楽死は認められていないが、延命治療の中止を選択する尊厳死については事実上認められている。患者が過剰な延命治療を拒否する形で、自然な死を迎える選択肢が存在しているが、法的には完全に整備されていない。
賛成と反対の意見
賛成意見では、患者が苦痛から解放され、自分の意思で尊厳ある死を迎える権利を持つべきだという主張がある。また、長期間にわたる終末期医療の負担を軽減するという経済的な理由もある。
反対意見では、安楽死が「権利」ではなく「義務」になってしまう懸念が指摘されている。家族や社会の圧力によって、安楽死を選ばなければならない状況が生まれる可能性がある。また、医師の判断基準が曖昧であることや、生命の尊重に関する倫理的問題も反対派の主張である。
まとめ
安楽死は、個人の尊厳と意思を尊重するか、生命の保護を優先するかという難しい問題である。くらんけさんの事例では、患者自身の苦しみと家族への愛情の狭間で葛藤しながらも、最終的に生きることを選んだ。しかし、その選択は一時的なものであり、今も彼女は安楽死への思いを抱えている。世界では安楽死が法的に認められている国もあるが、日本ではまだ法的整備が進んでおらず、今後も議論が続くであろう。