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『火垂るの墓』がネットフリックスで公開、あるアメリカ人のレビューが話題に

スタジオジブリの名作『火垂るの墓』が、2024年9月16日より日本を除く190ヶ国以上でネットフリックスにて独占配信された。それに伴い、あるアメリカ人男性のレビューがSNS上で大きな注目を集めている。このレビューは、作品の深いメッセージ性と感動を的確に表現しており、多くの人々の共感を呼んでいる。

 

 

 

 

火垂るの墓』の概要とあらすじ

火垂るの墓』は、1988年に公開された高畑勲監督によるアニメ映画である。第二次世界大戦末期の神戸を舞台に、14歳の兄・清太と4歳の妹・節子の生き様を描いた作品である。戦火の中で親を失い、懸命に生きようとする兄妹の姿が、戦争の悲惨さと人間の絆を鮮烈に映し出している。

物語は、清太が駅構内で息絶えるシーンから始まる。そこから時間が遡り、戦時下での兄妹の過酷な日々が描かれていく。食料難や周囲の無関心に直面しながらも、二人は力強く生き抜こうとする。しかし、過酷な現実は容赦なく彼らを追い詰めていく。

アメリカ人男性のレビューが話題に

ネットフリックスでの配信開始後、あるアメリカ人男性が投稿したレビューが大きな反響を呼んでいる。以下がそのレビュー全文である。


「最初に言っておきたいのだが、もしあなたがこの作品をまだ観ていないなら、このレビューを読んだ後(もしくは読む前でも)できるだけ早くこの映画を観るべきだ。買っても借りてもいい。なぜなら、イサオ・タカハタが生み出したこの傑作の価値を伝えるのに、私の言葉だけでは不十分だからだ。私の知る限り、最も力強い反戦メッセージを持つ映画が『火垂るの墓』である。芸術作品としての価値を高めたら、ピカソゲルニカエルガーのチェロ協奏曲に同ランクと言える。

多くのアメリカ映画の中で、これほど強力な『反戦メッセージ』を持つものがあっただろうか?『華氏911』?『地獄の黙示録』?それとも『シンドラーのリスト』か?率直に言っても、どれもこの作品に及ばない。『火垂るの墓』は、汚れなき魂の喪失を描いた作品だが、それは幼い二人の主人公のことだけではなく、日本という国全体にとっての話なのだ。

ストーリーの中心となるのは二人の子どもたちだ。13歳の清太と、4歳になる彼の妹の節子。彼らの母親は第二次大戦中、爆撃のために命を落とす。そのため、この兄妹はおばの元に身を寄せることになる。最初は親切だったおばだが、次第に、なぜ兄妹に食べ物を与え保護しなければならないのか?なぜ清太は国のために働こうとしないのか?と、不快に思うようになっていく。

結局、清太と節子は、廃墟となった防空壕で、二人だけの暮らしを始めることになる。しかし、食料がなかなか手に入らず、徐々に栄養失調に陥ってしまう。そして、彼らは命を落とすのである。実は、映画が始まる時点で、彼らが死ぬことは明らかにされている。ボロボロの服をまとう、駅構内に横たわる清太、栄養失調の状態にあることは明白だ。彼の持ち物だったミステリアスな缶を、駅員が夜の闇に向かって投げ捨てた。そこにはホタルが舞っており、節子の幽霊が現れる。そこに清太の幽霊が加わり、彼らは電車に乗って、あの世へと旅立つのだ。ストーリーは、そこからフラッシュバックされる形で語られていく。『昭和20年9月21日夜、僕は死んだ』これが出だしのセリフだ。

この映画で興味深いのは、日本の作品であるにもかかわらず、日本人を被害者として扱うこともなければ、アメリカ人を悪者扱いするわけでもないということだ。むしろ、苦しんでいる子どもたちを冷たくあしらう日本の人々に対しての軽蔑が感じられる。タカハタは、戦争で真に失われるのは生命ではなく、汚れなき魂であると訴えているのだ。

アニメーションそのものは、リアリズムに基づく伝統的なスタイルで、ディテールも豊富だ。キャラクターたちの死を悲劇的に描く一方で、美しい瞬間も多く描かれている。だが、この作品に称賛されるべきシーンが数多く含まれていることは、別に不思議なことではない。なぜなら、この作品を制作しているのは、日本最大のアニメーションスタジオ、スタジオジブリだからだ。私は幸運にも、このスタジオが作り上げてきた息を飲むような作品の数々を鑑賞する機会に恵まれてきた。

火垂るの墓』は、ストーリー、その象徴的な意味、アニメーション、全てが一体となって、まるで腹に強い一撃を食らったような心の衝撃を感じる作品だ。そのショックから立ち直ることは難しく、忘れることは不可能な作品だ。アニメーションではあるが、極めて生々しくもある。実写映画ではないという理由で、作品の力強さが損なわれるわけではないという点にも気づいてもらえるだろう。

あなたに、立ち直れなくほど落ち込んでも構わないという夜があるなら、是非『火垂るの墓』を観て頂きたい。これは、決してあなたが喜んで観たがるタイプの作品ではないが、しかし、決して、観たことを後悔する作品でもない。」


このレビューは、映画の核心を突いた鋭い洞察と深い感動を伝えており、多くのユーザーから賛同と共感の声が寄せられている。

映画のテーマとメッセージ

火垂るの墓』は、戦争がもたらす悲劇と、純粋な魂の喪失を描いた作品である。兄妹が直面する過酷な現実は、戦時下における社会の冷淡さや人間関係の希薄化を浮き彫りにしている。また、戦争の犠牲となるのは軍人だけでなく、無辜の民である子どもたちであることを強く訴えている。

高畑勲監督は、この作品を通じて「戦争とは何か」「人間とは何か」という根源的な問いを投げかけている。敵味方の二元論ではなく、人間の内面や社会構造に焦点を当てている点が特徴的である。

スタジオジブリ高畑勲監督の功績

スタジオジブリは、日本を代表するアニメーション制作会社であり、多くの名作を世に送り出してきた。『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』など、その作品群は国内外で高い評価を受けている。

高畑勲監督は、宮崎駿監督とともにスタジオジブリの礎を築いた人物である。彼の作品は、社会問題や人間の本質に深く切り込むものが多く、『火垂るの墓』はその代表作と言える。高畑監督の繊細な演出と深いメッセージ性は、多くのクリエイターに影響を与えている。

火垂るの墓』の評価と影響

公開当時から、『火垂るの墓』は国内外で高い評価を受けてきた。アニメーション映画としての枠を超え、戦争映画としても名作の一つに数えられている。多くの映画賞を受賞し、現在でも戦争の悲惨さを伝える作品として、学校教育の場などで取り上げられることもある。

また、この作品はアニメーションの可能性を広げたとも言われている。アニメは子ども向けの娯楽という固定観念を打ち破り、深いテーマを扱うことができるメディアであることを示した。

まとめ:今こそ観るべき『火垂るの墓

ネットフリックスでの配信開始により、世界中の人々が『火垂るの墓』を手軽に観ることができるようになった。戦争の記憶が風化しつつある現代において、この作品が持つメッセージはより一層重要性を増している。

アメリカ人男性のレビューにもあるように、この作品は観る者に深い感動と考えるきっかけを与えてくれる。決して楽しい気持ちになる作品ではないが、その体験は決して無駄にはならないだろう。

ぜひ、この機会に『火垂るの墓』を観て、戦争と人間の本質について考えてみてはいかがだろうか。